限られた環境の中でも、
ベストなものができたと思う

飯田成一 インタビュー


●まずは『SALARY BAY』完成おめでとうございます!

ありがとうございます。

●間違いなく最高傑作というか、vezというバンドを決定づける作品になったのではないかと思います。

自分が好きなアーティストがいろんなアルバムを出してて、その中でも特に好きなアルバムって絶対あるじゃないですか。なんか、そんなアルバムになるのかなって。なってほしいなって思うね。次のアルバム出すときには同じこと言ってるかもしれないけど(笑)。

●ハハハ。いや、本当それくらいすごいアルバムですよ。

嬉しいです(笑)。

●3枚目のアルバムになりますけど、バンドの紹介状だった1stアルバム『Heaven flower』や、明確なコンセプト・アルバムだった2ndアルバム『Intuitionistic logic』があったからこその突き抜けた印象を受けました。

そうですね。なんにもないところからこのアルバムができたんじゃなくて、やっぱり約3年一緒にやってきて、音源を一緒に作ってきたからできたものでは当然あるよね。

●正直手応えはすごくありますよね。

ありますあります。手ごたえはあるなぁ。でもそれはもちろんTDが終わって思ったことなんだけど、その前に、なんとなく曲ができてきた段階というか、スタジオで曲が徐々に出来上がってくる段階で、すでに「なんか(次のアルバム)良いんじゃないの?」って手ごたえは個々にあったと思うけどね。

●曲作りの段階でということですね。

もちろんその時点で思ったことだから、そこに根拠はないんだけど。体感としてそういうのはあったよね。あとは実際の曲の表情とかだけじゃなくて、スタジオで曲を仕上げていく取り組み方とか、そういうこともひっくるめて良い空気感はあったね。こういう曲があるから、とかだけじゃなく。それをやる過程にもね。

●今までと違った取り組み方だったということですか?

具体的に何がってわけではないんだけどね。個人的に言うと、前とは曲を作る姿勢が明らかに変わってて。「Array of planet」(4thシングルの表題曲)あたりからだけど、フトちゃんと話してて言われたのが、「メロディはつけてこなくていい。それは俺がつけるから」って言われたんですよ。それからはそういうふうに曲を作るようにしてるから、取り組みやすかったね。今まではメロディからリズムを作っていくって順番があったんだけど、わりと今回は「こういうリズムがあったら面白いんじゃないかな」とか、そういうふうに曲が作れたんで、それはピンポイントで集中できてよかったなと。

●成一さんのレコーディングは4月の終わり頃だったと思いますが。

そうだね。曲が出来上がった段階と、みんなが録るって段階が、またそれぞれ余裕がある中で録音できたっていうのも良かったかな。それも今までと違う点ですね。先々の予定や決定事項がある中で始めたわけではなかったから。

●本作はいわゆる流通をしない作品でもありますからね。

うん。前だと、「何日までにコレをやって~」とか、そういうのがあったから。今回は純粋にスタジオで(曲を)固めることに集中できた気がする。

●その感じはアルバムからも伝わってきます。もちろん成一さんのベースですから、音圧とかすごいんですが、その音がとてもリラックスしているなと感じたんですよね。音楽を楽しんでるなって。

全体的にそうなのかもしれないね。「楽しいものを出そう!」って意識じゃなくて、どんな形のものをやっていても、内面が楽しめてるというか。それが出てるのかなと思います。それは今の4人が集まったばかりのときとは違うし、今の4人だから出せてるものかもね。最初はもっとね……がむしゃらに「やってやるぜ!」ってものだけだったかもしれないし。

●もちろん今までの作品も成一さんの音なんですが、今回はより成一さんらしい音になっている気がするんですよね。

今回のアルバムは曲のバリエーションがすごくあって。もちろん今までもバリエーションはあったんだけど、いろんなタイプの曲があるってだけだったかもしれないよね。今思うとだけど。今回はまずvezという確固たるものがあって、そこからいろんな曲がある感じがするね。それは自分でも感じたかな。

●いちファンとして、こんなすばらしいアルバムを作ってくれたことはとても嬉しいです。早くたくさんの人に聴いてもらいたい作品です。

そうだね。でも、個人的には「よし!できた!」って余韻にまだ浸っていたいけど(笑)。

●それもすごくわかります(笑)。それだけ達成感があるということですよね。

そうだね。なんかね、歳は関係ないかもしれないんだけどさ。今の俺らの年齢とか、自分たちの置かれている状況とかさ。正直好きなことだけできるわけじゃなくて。でも、そんな限られた環境の中でも、ベストなものができたとは思うよね。

●それは本当にそう思います。すごいアルバムですよ!……こんなことしか言えなくて申し訳ないですが(笑)。

だって話してて、すごい嬉しそうだよね(笑)。

●はい(笑)。また作品の中で成一さんのベースはすごいアクセントになっていますよね。この独特のへヴィさは成一さんじゃないと出せませんよね。

なに?もう一回言ってもらえます(笑)?

●ハハハハハ。聞こえませんでした?

よく聞こえなかったんだけど(笑)。

●この音は成一さんじゃないと出せません(笑)!

ありがとう(笑)! でも自分の音がバンドに反映されてるなら良いよね。あと、それ以前の個々の部分があって。俺としては、ベースをやっている子とか、これからベースを始めようって子にそういうふうに思ってもらいたいよね。自分が好きなベーシストにそう思ったように、そう思ってもらいたいし。また、そうやってベーシストになった子が、さらに下の世代にそう思わせていけたらすごく良いし。それをつなげていきたいんだよね。正直ある程度は伝えられてる自負はあるんだけど(笑)。

●それはもう(笑)。それこそ成一さんはZI:KILLやCRAZEなど説明不要なバンドを経てこられたわけですが、そこで少しでも成一さんのベースの音に触れたことがある人たちにも、この『SALARY BAY』を聴いてほしいですね。

そうだね。もちろん若いときから今までの間にいろんなことをやってきたから今があるし、バンドマンである前にいち人間としてもいろんな経験をしてきてるし。そういう意味では常に今がいちばんとは思ってるんで。だからそういう人たちにも観たり聴いたりしてもらえたらなと思うんだけど。そこに引っかかりがあればね。昔を知ってくれている人全員に「聴け!」とは言わないけど(笑)。でも、きっかけがあって聴いてくれたら、「お、やってんじゃん」とは感じてくれると思うよね。

●きっと気に入ってくれると思うんですよ。「今も飯田成一はこんなにかっこいい音出してるのか!」って。

そうだよね。しかもこの歳でね(笑)。本当そう思うよ。こないだ名古屋でTHE SLUT BANKSと対バンしたときに横関(敦)さんといろいろ話をしてたんだけど、「俺らが始めたばかりの頃は、30代とか40代でがっつりやってる奴なんていなかったよ」って言われてて。本当そうだったなぁと思って。でも自分、もうすぐ50歳じゃんって(笑)。そんな状況になっても、感覚変わらずにバンドをやれてるというのは、良いことのような気がする。

●アルバムには「夜虹」や「目には目を その手に花束を」という、とても人気の高い2曲を録り直して収録されていますが、そんな2曲と並べて、新曲たちがまるで遜色ないですよね。

あの2曲は過去にシングルでも出してて、ライブでもずっとやってきたから、成長した形になったかな。で、その2曲を軸にアルバムを作ったところもあるから、このアルバムでvezを初めて聴くって人がいると思うんだけど、そういう人にとってはとてもバランスの取れた作品になってると思うよね。

●曲の始まり方や終わり方、曲順とか曲間まで、すごく練られた作品ですよね。

うん。今回はすべてが良い方向にいったかなとは思うよね。個々の曲もそうだし、曲の並びもそうだし。それがとてもバランス良かったかなって、改めて聴いて思うかな。

●インタビュアーとしては、もっとアルバムのオススメとか「ここを聴け」みたいなものを聞いたほうがいいんでしょうが、たぶんそれは成一さんの場合違うのかなと。成一さんらしいベースを弾いていることが聴き所というか。だから全部ですよね。

そうそう! そうなんですよね。俺らしさというのはすごく表現できたかなと。それも意識はしてないけど。ただ、らしくなかったら別に俺じゃなくて良い話だし。

●だからこそ、たくさんの人に聴いてもらいたいですよね。

そうですね。もちろん買ってほしいけど、どうしても手に取るタイミングがない人もいるだろうから。そういうときは友達にダビングしてもらってもいいから、とにかく聴いてもらえれば。それでなにか引っかかってくれたら、ライブに来てほしいよね。そこで判断してほしいかな。

●そうですね。それも楽しみです。正直、ステージの上の人たちがまずテンション上がりそうな曲ばかりだと思うんですよ。

うんうんうん。速くなっちゃったりするよね(笑)。でもアルバムの曲がライブでどんな風になるかは楽しみだね。

●ツアーも決定しておりますが、成一さんは旅好きなんですよね。

そうだね。個人的に旅行に行ったりするのも好きだし。やっぱりいつもの生活している環境とは違うものじゃないですか。そこに行く過程とか景色とか人だとか。それを楽しんでるかな。そういう普段と違う環境に身を置くというのは刺激にもなるし。だから楽しみたいなぁって思うよね。メンバーに若干一名、旅嫌いがいたりするけど(笑)。でも、言ってるだけだと思う(笑)。行ったら行ったで「これうまい!」とかなってるから(笑)。それも楽しいよね。

●少し前に成一さんのブログに「好きでやってる」という言葉があって、そこに集約されているような気がしました。そこにはもちろん責任もあって、先ほど言われたように「この音じゃなければ俺じゃなくていい」という言葉も、すごく重い言葉ですよね。

うん。メンバーみんなそうだと思うけどね。それが集まってvezになってるから、バンドとしてのそういう部分も感じてほしいし、プレイヤーとしての部分もそれぞれに聴いてほしいよね。

●それぞれの音、どこを聴いても主役ですよね。

そうだね。だからこれを聴いてギター弾いてみようとか、ドラム叩いてみようとか思ってくれる人がいたらすばらしいことだし。

●実際に成一さんのベースを聴いて、ベースを買ったという方は本当にたくさんいると思うんですよ。

嬉しいよね。やっててよかったって思うよ本当に。ありがたいことに、いまだにそういう奴がいてくれるから、続けてられるなって思う。

●そういうものがこのアルバムでさらに広がっていくと良いですよね。

うん。だからこのアルバムを良いなって思ったら、友達に勧めてほしいな。「こんなバンドいるんだけど」って。なんかちょっとしたきっかけで出会うものって多々あると思うんで。振り返ってみると自分もちょっとしたことで知るきっかけになって、好きになったものってあったりするから。そのきっかけが広がっていけばいいなって。

●そうですよね。ほんと気軽に「ライブ行かない?」というのも良いですし。

そうそう。そういう感じだよね。それがvezだったら嬉しいな。